完結編

2021年12月30日 日常 コメント (9)
私が14歳の夏に両親は離婚したわけですが、
その理由は、父が家にお金を入れなくなったため。でした。
その頃、たぶん愛人さんのお店を出す頃じゃないかと思われます。
父は甘えられると弱く、頼まれたり泣きつかれたりすると
断れない性格のひとで(ここ、すごく受け継いでいる)
お金を貸したり保証人になったり・・・(私はならないけど)
だから、父の収入が良いのにもかかわらずうちは裕福ではない・・・
それで母は、パートに出るのですが、
父が職場に酔っぱらって怒鳴り込んでくるから辞めなくてはならない
貯金を切り崩して生活する日々で
母は、だんだん離婚を考えるようになります。
離婚をすれば、もう他人だと強く出れる。
生活の邪魔をされない。そう思ったと。
母は、離婚届の用紙を手に最初で最後、愛人宅に出かけます。
マンションの10階でした。その時父はシラフで
母は、「本当は別れたくないけど、このままじゃ子供を育てられない
子供たちが成人したらまた、よりを戻そう」と大ウソをついたと
父は酔わなければおとなしいひとで素直にサインしたそうです。
母は猛ダッシュで帰り、即刻、区役所に離婚届を提出しました。

親子3人での生活が始まりましたが、女手ひとつで子供二人を育てるのは
相当に大変だったのだと思います。
ある日、母が私に「一緒に死のう」と言いました。
私は「まだ、やりたいことが沢山あるけん、死にとーないよーねー」
と言いました。
できるだけ明るく笑いながら言いましたが、心臓はドキドキしていました。

1年後、公営住宅に引っ越しますが、
どこで住所を知ったのか酔っぱらって父が訪ねてくるのです。
母は不在、ドアをドンドン叩いて大きな声で叫ぶ、恐怖でしかなかったです。
それでも、極たまに、郵便受けに茶封筒で謎の1万円が入っていました。

私が19歳になった頃、父から手紙が届きます。
「都殿 ○○町の○○呉服店に振袖を注文したから行きなさい。
柄が気に入らなければ好きなもの変更するように 父」武士か(笑)
複雑でした。父が着物のことなどわかるわけがない、
愛人さんのひいきの呉服店だとわかる。
振袖は正直嬉しかったけど母の気持ちを思うと複雑でした。
呉服店に行くと折角だからと反物のまま着付けをしてもらいその姿を
カメラで撮るのです。それは、父のカメラで、撮るように頼まれたそうです。
可愛そうな父・・・仕立てた着物でちゃんと髪も結い着つけた写真は
自分の手には入らないだろうとおもったのでしょう。
のちに写真館で撮った写真は、親戚を通じて届けました。

それから5年後、父に会いました。たぶん、10年ぶりくらいでしょうか。
父方の従姉から「お父ちゃんが都に会いたがっている、
大学病院に入院している」と
それは、実は愛人さんからのお願いだったそうです。
母に話しました。母は、会ってほしくない様子でした。
でも、可哀そうだと思う気持ちが常にあったので会いに行きました。
私は大きくなりましたが、父は小さくなっていました。
何を話したか全く覚えていません・・・。愛人さんは病室にいませんでした。

それから4年後、父方の従兄が結婚をするので私に出席してほしいと。
これも愛人さんからのお願いでした。愛人さんは出席しませんでした。
父は親戚に「都です。大きくなったでしょう」
と本当にうれしそうに私を紹介しました。
テーブルにつき父の隣に座りました。
こんな日が来るなんて想像もしていなかったでしょう。私はそうです。
結婚式が終わり、帰宅して母の顔をみると涙が溢れました。


ほどなくして、愛人さんは亡くなります。
不思議なことにその愛人さんの葬儀が行われた日、
私は、そのお寺の前を偶然バイクで通っています。
「○○家葬儀場」と書かれた案内板に
「あれ?私と同じ名字だ、珍しいね。」そう思いました。
母は、新戸籍をつくったので離婚後も私の名字が
変わることはありませんでした。
そして、その名字は父達が入籍したことを意味しました。

私はある意味、愛人さんに感謝をしています。
不倫をして母を苦しめて離婚に追いやった。でも、
あんな酔っ払いの父とずっと一緒にいてくれた。苦労もしたと思います。
私に会えない父になんとか娘と会わせてあげたいとしてくれたこと。
愛人さんと会ってみたいと思ったけれど、それは母への裏切り行為なので
絶対にできなかった。

父が住んでいる町は大体わかっていましたが、はっきりとは知りません。
少し行ったところに大き目のスーパーがありました。
そこで何度か父を見かけますが、
父は目の前ですれ違っても私だと気づきません。
大人になってから会ったのは2回だけ。
父の中では私は幼子のままなのでしょうか。
店内で父の後をつけます。買い物かごには甘いものが入っています。驚きです。
あと、冷凍食品も。店員さんと親し気に話をしています。
柱の陰からじっと見つめます。涙が込みあげます。
一人ぼっちになった父に声をかけてあげることもご飯を作ってあげることも
許されません。母が悲しむから・・・
そうすると、情にほだされてしまい私は父と母の狭間で苦しむでしょう。
母は、晩年も父に暴力を振るわれる悪夢をみていました。
二度とあんな暮らしは嫌だと。恐れていました。

それから10年後の12月。
父が亡くなります。
部屋の灯りもテレビもつけたままで心不全でした。
葬儀が終わり、部屋のかたずけに行った親戚が言いました。
「散らかし放題で大変だったけど都の写真だけは大事そうにきちんとされてたよ」と

父の一周忌で納骨をしました。
お墓には元愛人さんと父の名前が並んでいました。
私は目を閉じて心で呟きました。

「長い間、父のことを・・有難うございました」
やっと言えた一言でした。

コメント

まるこ
2021年12月31日8:25

おはよう。

一冊の小説を読み終えた感じがするよ。
紆余曲折あったお父さん。でも都ちゃんの大事なお父さん。
今はあちらで穏やかにお母さんとお茶していると良いね。
人生色々とはいうけれど、私も身内が破天荒な生活していて最後1人になりゃしないか?と心配するけれど。それも人生なんだよね。
人生って人の数だけ物語があるね。

今年もありがとうね〜!
来年もどうぞよろしくお願いします。
都ちゃん。ようお年を!

まな
2021年12月31日10:09

読み終わった後、ため息というか、吐息がふわーっともれるようなお話でした。
思わず没頭して読んでしまったので、息し忘れてたからかもしれません(苦笑)。

綺麗なだけじゃない、正誤だけでは測れない決断とか、
それに伴う痛みとか我慢とか、決意とか、色々あったのでしょうね。
小説になりそうです。

まるこ
2021年12月31日10:09

間違い。

良いお年をお迎えください!

ぎんじ
2021年12月31日20:17

一番多感な時期にご両親の離婚を経験するのは辛かったですね。
お母さんを苦しめたお父さんの行いは決して許されるものではないし、当然お母さんの味方だけど、自分にとって父親である事には変わらないですからね…
しかしその愛人さん、結果的に入籍はしたみたいですが、それであなたの人生は幸せだったのか?と問いたいですね。
私は…ちょっと許せないです。都さんが心のどこかで許したとしても、私は許さんぞーーー!!

とまぁ、感情が激し目の私ですが、来年もどうぞよろしくお願いいたします!

マダムM
2021年12月31日21:49

読ませていただきました。
お母様にとって愛人さんは憎き相手以外何ものでもないでしょうが、根は悪い人では無かったのでしょうね。お父様と都さんの間を繋ごうとしてくれたのでしょ?
夫の母親は再婚したのですが、母親は相手の方のお子さんを受け入れませでした。その相手の方は優しい人で夫を息子として、とても可愛がってくれました。しかしほぼあちらのお子さんたちとの連絡は無かったようです。その相手の方が危篤状態になって、夫が連絡をとり、父親と最後の会話が出来き、見送ることが出来ました。愛人さんのお話を読み、思い出しました。なんでもっと父親と会わせてあげなかったかと。私の夫とあちらの娘さんを同等に扱ってあげなかったのかと思います。不倫とかではなくバツイチ同士の再婚だから、そして、あちらの娘さんも夫も、母親たちと同居していないから、もっと愛情を平等にかけてあげられなかったのかと思いました。娘さんは先年亡くなったのですが、お父さんと二人で写っている一枚だけの写真を大切に持っていました。
皆さん(我が家も含め)今やあちらの世界の住人、ご供養致しましょうね!

都わすれ
2021年12月31日22:25

まるちゃん

何度も書き直したわー
疲れたわー(笑)
そうだね、人の数だけ人生があるね。
どんな人生でも悔いのないように日々を歩きたいものだね。
とりあえず、私はダイエットだね・・・
いえいえ、こちらこそ有難うね♪
来年もよろしくお願いします♪
良いお年をお迎えください♪

都わすれ
2021年12月31日22:27

まなちゃん

おーい、息をちゃんとしてー(笑)
気が付けば、なかなか・・・
大人たちもいろいろとやらかしたり
ただひたすらに真面目に生きた母とか。
でも、結局は子供が一番なんだよね。特別なんだ。
子供が生まれてなかったら、また違った人生だったんだろうね。

まなちゃん、時差ってどのくらいだったかな?
今年もコロナに明け暮れた1年となってしまったけど
来年こそは、少し平穏となるようにと願うばかりです。
良いお年をお迎えください。でいいのよね?(笑)
来年もよろしくお願いします。

都わすれ
2021年12月31日22:28

ぎんちゃん

ぷぷ、お怒りモードのようですねん?
そうね、あ!両親の離婚さ、実は近所のおばちゃんから聞くという
事態になってしまったのよ。
「あんた、お父さんとお母さんが別れてもしっかりするのよ」
みたいなこと言われて、「はぁ?」みたいな(笑)
そうね、たしかに愛人さんのした行為は良くないね。
でも、こうなんか可哀そうになるんだよね・・・
きっと幸せじゃなかったと思うんだよね。愛人さん。
生まれ変わったら普通の陽だまりのような人生を歩いてほしいね。

私は感情が激し目のぎんちゃんが大好きです♪
来年もよろしくお願いします!

都わすれ
2021年12月31日22:44

マダムMさん

ご覧いただきありがとうございます(笑)
そうですね、きっと父が私に会いたがっているのを感じていたのでしょうね。
でも、ふと思うのは父のことしか考えていないんですよね、愛人さん。
子供である私の気持ちは考えていない。ような気がしました今。(笑)

なにか、拘りのようなものがあったのですかね?
でも、誰も幸せになってないのが悲しいですね・・・
娘さんが持っていらしたお父様と二人で映っている写真。
哀しいですね・・・やはり生きているうちが・・・ですかね。
幸せになるきっかけ、実は結構落ちていて、気付いていても拾えないのですかね。
見落とすのでしょうか?となると私も拾えていない?困った・・・
そうですね、ご供養です!今日、母のところへいってきましたよ。
父の墓前にもいかなくちゃ。
今年もお付き合いいただき有難うございました。
来年もよろしくお願い致しますm(_ _)m

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