奇跡的に

母に会えた。
丁度二週間ぶりだ。

母は先週の水曜日から発熱を繰り返している。
抗生剤の効きが悪いようで、内服から静注に変わった。
時期が時期なだけに不安感は半端ない。

昨日、おかずを取りに来た兄が言ってはイケナイ三文字を言う。

私の胸は張り裂けそうだ。
兄に「いらんこというな！ばかちん」と言いたいところだが
兄自身も不安だからこその三文字。

兄が帰った後、台所で下処理をしなければならない蕨を見つめ涙が出る・・・
夫がすきな山菜、放り出すわけにはいかないし、たくさん買った。
あぁ・・・・ラッキーな特売で買ったスジ肉３パックも
煮込みの下処理をしなくては・・・
おいしく煮込みができる予定なのにもう自信がない。

会えないから顔を見れないから不安が募る。

そして今日の夕方いつもようにクリニックにエレンタールを
持っていくと外来のナースＩさんが、
「エレンタールまだ家にある？在庫が少なくなったら言ってね。
お母さん、熱があるけー心配じゃね。顔みたいでしょ？見たいよね？
院長先生にちょっと会えないか言ってあげよう。待ってて。」
と院長先生に言ってくれて、ＯＫとなり検温して手の消毒して病室に行った。

母は、ベッドを３０度に倒してもらいＴＶのほうを力なく見ていた。

あ・・・・痩せとる・・・顔色が悪い・・・

それはそうだ、二週間一切固形物を食べていない。
私がいないとおかゆさんも卵豆腐もとろろ芋もオレンジもイチゴも
えっと・・・えっと・・・とにかく何も食べないんだもの

「おかぁーちゃん、おかぁーちゃん」

振り向いた母は数秒して笑顔になった。

「しんどいんね？大丈夫？熱が出とるんじゃねぇ」

「ちょっとしんどいけど大丈夫よねー、
あーおにぃちゃんが来たよ、昨日じゃったかね」

「おかぁーちゃん、おにぃちゃんも私もこれんのよコロナウイルスで
面会禁止なんよ」

「おかしいね～きたけどね～」

夢を見たのか妄想か(笑)

怖くない夢で、嬉しい妄想でよかった。

「おにぃちゃんにカレーを作ったんよ、まー久しぶりでね～」

「ほうね、上手にできたん？」

「まぁまぁじゃね」

笑ってる。

「おかぁちゃん、もうずっと心配でからね～
おかぁちゃんがわたしの顔を忘れるんじゃないかと思って」

「なによーるん、子供の顔を忘れる親はおらんわいね～」


ニコニコして言う母。涙が溢れる娘・・・

こんなに話をする母は何か月ぶりだろうか？

口の周りが汚れている。
口腔ケアをしていないのがわかる。

「目やにがついているので、顔だけ拭いてやっていいですか？」
とナースに聞いてから熱いタオルで拭いた後に美容液を塗った。
すごく浸透していったので、かわいそうに思った。

長居はできない。

「ほいじゃ帰るよ、また、先生に許可もらってくるよ」

「バイクじゃろ？しっかり注意してね」

「わかったよ」

何度も何度も手を振った。



早く、熱が下がりますように。